過食がやめられない。Food addiction(食物依存症)について
こんにちは。
心理セラピストの杉原京子です。
ゴールデンウィークもとうとう終わってしまいましたね。緊急事態宣言が出されて自粛生活が1ヵ月程経ち、最近よく耳にする言葉「自粛太り」です。私も同様で、運動量は減ったのに自粛前の生活と同じ量、もしくはそれ以上に食べたり、お菓子やパンを作ったりして、太ってしまいました。慌てて、YouTubeの動画でエクササイズを始めました(汗)。
先行きが見えなくて不安を感じたり、行動が制限され家の中で生活にストレスを感じて、ついつい甘い物を食べすぎたりしまいます。先日、ディスカバリーチャンネルの「ミラクル・ダイエット」と言うアメリカの番組を何本か見ました。これが非常に面白く興味深いものでした。体重200~300キロ越えのスーパーサイズの人達が、医のバイパス手術の前後1年間を追った番組です。今日は、この番組で出てきた言葉「Food addiction(食物依存症)」について、根っこに潜んでいる心理的な問題についての私見を書きます。
「Food addiction(フード アディクション)(食物依存症)」という言葉をご存知ですか?
世の中にはたくさんの依存症があります。アルコール、ギャンブル、買い物、ドラッグ、恋愛、性といったものがあります。依存症とは、物質の使用や行為をし続ける状態です。無我夢中でその物質の使用や行為を行い、自分でコントロール出来なくなってしまい、人間関係や、日常生活に支障をきたしてしまいます。そんな依存症の中で、食べ物を食べ続ける(過食し続ける)「フード アディクション」というものがあります。朝起きてから、寝るまで食べ物の事で頭がいっぱいで、食べるかテレビを見たり、ネットをするだけで1日を過ごしています。1食あたり3~4人分の量を1日3~5食摂取します。過食嘔吐と違うのは、過食後、罪悪感を感じても嘔吐しないということです。嘔吐しないので、食べた物は体に蓄積され、体重が200~300キロというスーパーサイズになってしまいます。
目次
頭の中はいつも食べ物の事でいっぱい
- 体は空腹を感じていないのに、食べてしまう
- やせたいと思っているのに、食べてしまう
- 食べたい衝動を自分でコントロールできない
- 食べてしまった後、ものすごい罪悪感に襲われ、自分を責めて自信を失う
- 動きが鈍くなり、運動量が減り、さらに太ってしまう
- 周囲の目を気にして恥ずかしさを感じたくないので、外との世界を断ってしまう
命の危険にさらされ、自分の身の回りの事(家事等)も一人で出来ず、家族と出かける事もできない、そんな自分に嫌気がさして痩せたいと思い食べるのを止めようとし我慢するも、ストレスが溜まって周りにイライラをぶつけてしまい、過食する。過食した事に後悔し、自分を責めて塞ぎこんでしまい、また食べてしまう。過食をしていた人達はそんな負のスパイラルに陥り、過食をエスカレートさせていました。
過食してしまう3つの原因
大きく分けて3つあります。
1.自分の感情と向き合えない、向き合い方を知らない
ほとんどの人が幼少期から心理的問題を抱えていました。
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- 性的虐待を受けていた
- ネグレクトで母親に捨てられた
- 親が薬物依存だった
- 我が子との死別
- 兄弟につきっきりで見てもらえず孤独だった
- 過保護・過干渉
- 食べ物をずっと与えられ続けていた(それ以外の関わりがなかった)
幼少期に大きなトラウマを持ったり、人との関わりが希薄だったり、健全な関わりがなかったりし、自分の中にある「恐怖・不安・怒り・悲しみ・絶望・孤独」といった感情をどう向き合っていいか分からず、それを感じそうになると食べ物を食べる事で、感じないようにしていたのです。
「心の中に安心・安全がない」状態なのです。愛着に問題を抱えているのです。
食べている時だけ、「安全」を感じる、「居場所」を感じる、「落ち着く」、「寂しさ」を埋められる、そう言っていたのがとても印象的でした。
本来なら、養育者との間で愛着が健全に育まれていれば、食べ物ではなく、自分自身や、家族やパートナー・親友等と安心・安全で繋がれるので、ネガティブといった感情を感じても、食べ物で埋める必要がないのですが、愛着を築き損ねていると、食べ物を食べる事で癒そうとしたり、感じないようにしたり、愛着の対象が食べ物になっているのだと私は思います。
過食をする人の特徴として、濃い味付け(塩分)と高脂質で糖分が多い食品(ファーストフードやジャンクフード系)を早食いし、家族と同居していても食卓が別で孤食(一人で食べる)をしています。自分の外見に対しても引け目を感じているので、周りの目を気にし傷つきたくなからと、自分の殻に閉じこもって孤立しています。
2.支え手の存在
どのケースにも必ずお世話をしている人がいます。家族やパートナーと暮らし、その家族やパートナーが身の回りのお世話や生活費を支払ったりと、どっぷりと依存できる環境を作っているのです。食べる事に専念できる環境が整っているのです。本当に生活費に困窮したり、お世話をしてくれる人がいなかったら、自分で生活費を稼がないといけないのですから。どの人も献身的にお世話をしていましたが、皮肉にもこのお世話が返って本人の過食を止められない原因にもなっているのですね。あるお世話をしていた人の言葉が印象的でした。「甘やかし」と「サポート」の違いは何だろう?
3.変えて欲しい
多くの人がバイパス手術が最後の頼みの綱になっていました。しかし、バイパス手術は手段の1つであって、それで解決ではないのです。しかし、そこをはき違えるとバイパス手術さえ受ければ痩せられる、自分の人生は変えられると思ってしまうので、手術後の減量が滞ったり、リバウンドしてしまうのです。いくらバイパス手術を受けたからといって、運動せずに、暴飲暴食を続けていれば、元に戻ってしまいます。どれだけ過食をすることで自分の命を縮めているのかという危機感が薄かったり、どうしても過食を止めたい、という意思の乏しさが弱いとついつい食べ過ぎてしまいます。「どうして、過食を止めたいのか?」、「過食を止めて、どんな人生を歩みたいのか?」ここが肝となるんですね。
過食の果てにぶつかる問題
死のリスクという身体的な問題と孤立という精神的な問題があります。身体的な問題は、当たり前なのですが、死のリスクが高まり、どの人も寿命5年以内と言われていました。精神的な問題は、どんどん心が荒んでいき孤立化していくことです。こんな自分のみっともない姿を見られたくないという恥の感覚が強まり、食べる事以外何も出来ない自分を責めて感じる罪悪感から、人を遠ざけ、孤立していくのです。誰とも繋がらず、「食べ物だけが唯一の繋がり」になってしまうのです。
心理的な解決方法として
1.自分の感情と向き合う
自分の中の感情と向き合えるようになることです。自分の中から沸き起こる感情をないがしろにしたり、無視したりせずに感じて受け留められるようになることです。それには、自分の心の中に安全基地が必要となります。安全基地を作り、どんな感情や感覚を感じても大丈夫なんだと感じられるようになると、自分の感情と向き合えるようになるので、過食して感情から逃げなくて済みます。
2.自分の意志を強く持つ
どうして食べるのを止めたいのか?食べたくなった時にしっかりと葛藤し、自分で折り合いをつける練習をしていくのです。「食べたい」という感覚が出てきた時、どうして「食べ過ぎを止める」と自分で決意したのかを思い出し、自問自答で葛藤しながら、自己責任で決めていきます。この「どうして」と「自分で決意した」がとても大切な点です。欲しい未来を手に入れるのも、入れなくするのも自分次第なんですね。それほど、自分の意志は大切で重要なものだと私は思います。
3.自分で出来る事をみつけてやってみる
支え手になってもらってる人と話し合い、自分で出来る事と出来ない事を明確にし、一人でするのが難しそうなものだけ、サポートしてもらうようにお願いする。依存心や、甘えたいという感覚があれば、心理的な問題が隠れているので、見ていくといいと思います。人と安心して繋がる事が出来れば、食べ物に安心・安全を求めて依存する必要もなくなりますからね。誰かと一緒に会話を楽しみながら、ゆっくりと食事をすれば、食べ過ぎることも減るのではないかと思います。