職場で「相談できない」理由①——“相談=〇〇”と信じて、孤独な要塞で戦うあなたへ

職場でわからないことや問題に遭遇した時、あなたはどうしてますか?
「人に聞けない、相談できない。」って思い、ずっとひとりで悩んでいたりしませんか?
そして一人で抱え続けてしんどくなり、退職してしまうなんてことも。
意外と多いこの悩み。
今回は職場で相談できな心理的な理由をいくつかのパターンに分けてお伝えします。

Aさんの「たった一人の籠城戦」

ここに、エンジニアとして3年の経験を積んだAさんがいます。
Aさんは今日も、眉間に力を入れ、キーボードを叩く手が少し強くなっています。
Aさんの心には、張り詰めた緊張感が漂っています。

画面にはエラーメッセージ。もう2時間も同じ箇所で立ち止まっています。
内心は焦りでいっぱいです。

(なんでうまくいかないんだろう。ああ、どうしよう、また時間だけが過ぎていく…)

隣の席には、その分野に詳しい同僚がいます。
もし声をかければ、おそらく数分で解決するかもしれません。
でも、Aさんはどうしても声をかける気になれません。

「あのさ、ちょっと教えて」
たったその一言が、喉の奥でつっかえて出てこないのです。

相談することは、自分の「弱み」を見せること。
弱みを見せることは、相手に「負け」を認めることと、Aさんにとっては感じるからです。
Aさんにとって、職場は協力する場所というより、常に気を張っていなければならない「戦場」のように感じられるのです。

結局、Aさんは誰にも相談せず、無理をして作業を進めてしまいます。
そして数日後。

「Aさん、ここ、全然違うよ。どうしてあの時、相談してくれなかったの?」

上司からの指摘に、Aさんは言葉を失います。

相談しなかったんじゃない。
一人で抱え込み、戦っていたから、できなかったのです。

その結果が「ミス」という形になり、Aさんはさらに自分を責め、心が疲弊し、ストレスをためてしまうのです。
そして、職場での居づらさだけが積み重なっていきます。

妄想が作り出す「孤独な要塞」

Aさんは、能力がないわけではありません。むしろ責任感が強く優秀であろうと必死に頑張っている人です。

そんなAさんの周囲には、目には見えない「分厚くて高い壁」がそびえ立っています。

その壁は誰かが作ったものでも、作らされたのでもありません。
Aさんが、自分自身で傷つかないように積み上げて作った壁です。

その壁の内側で、Aさんは「自分だけの世界」に静かに浸っています。
そこは、誰の声も届かない、安全だけれど暗くて冷たい、孤独な空間です。
いわば、心を「籠城(ろうじょう)」させている状態なのです。

しかし、この孤立した籠城こそが、ネガティブな考えばかりを想像してしまう「妄想」の温床となります。
外との関わりがないため、自分のネガティブな思い込みだけが反響し、増幅してしまうのです。

  • チラッと目が合っただけで、「あの人、今自分のことを『仕事が遅い』と笑ったな」と確信してしまう。
  • 上司の何気ない一言を、「『お前は無能だ』という遠回しな宣告だ」と不安に駆られて深読みする。

現実は違うかもしれないのに、壁の中にいるAさんには、その「妄想」が「真実」に見えてしまいます。
そうして疑心暗鬼になり、周囲全員が敵に見えて、ますます壁を高くしてしまうのです。

なぜそこまでして籠城するのでしょうか?
それは、この壁がAさんにとっては「もう二度と傷つかないためのバリア」となるからです。
外に出てまた誰かに否定されるくらいなら、孤独な妄想の中で戦っている方が、心が少し楽だと感じてしまうのです。

刻みこまれた傷、心の痛み

なぜAさんは、これほどまでに頑丈なシェルターを必要としたのでしょうか。
それは、かつて壁がなかった頃、無防備な心を深く傷つけてしまった経験があるからです。

子供の頃、分からないことがあって聞いた時、困った時、こんな風に扱われませんでしたか?

  • 「はあ? そんなことも分からないのか」と責められたり、きつく言われたり。
  • 「出来ない子は要らない。家の子じゃない」と存在を否定されたり。
  • 「お前は本当に役に立たないな。もういい、あっちへ行ってろ」と突き放されたり。
  • あるいは、勇気を出して話しかけたのに、知らん顔して「無視」されたり。

嘲笑、否定、拒絶、無視。
もっとも信頼したかった相手からの裏切り。

「人に頼っても、傷つくだけだ」
「役に立たない自分、出来ない自分は、ここにいてはいけないんだ」

そして、
「悔しいけど、どうにもならない」

こうやって傷つきながら、屈辱感と無力感、そして根深い劣等感を覚えるようになります。
これらがトラウマとして心の傷となって、深く残ってしまったのです。

その古傷の痛みが、今、目の前の上司や同僚を通して呼び起こされて心をかき乱すようにフラッシュバックするのです。
Aさんが戦っている本当の敵は、目の前の同僚ではありません。
過去に自分をバカにし、否定し、拒絶し、無視した「あの時の誰か」なのです。

相談することは「負け」でも「弱み」でもない

「分からないこと」や「できないこと」があるのは、自分の存在価値がないということではありません。

少しだけ、想像してみてください。
もし逆に、後輩や同僚から「ここが分からなくて困っています」と相談された時、あなたはその人をどう思いますか?

「こんなことも分からないなんて、ダメな奴だ」と軽蔑しますか?
きっと違いますよね。
「困っているなら助けてあげよう」「力になりたい」と、自然に思うのではないでしょうか。

あなたがそう思うように、相手も同じ人間です。
あなたが相談したからといって、あなたを無能扱いしたり、嘲笑ったりする人は、あなたが妄想するほど多くはないのです。

本当に強い人とは、妄想の壁の中に孤立して頑張りすぎる人ではありません。
自分の弱さを認め、「助けて」と言える人こそが、本当の強さを持った人です。
なぜなら、自分の弱さを受け入れるには、とても大きな勇気がいるからです。

あなたが勇気を出して自分の出来ない部分を受け入れた時、
心にあった高くて分厚い壁に穴が空き
攻撃的なものではなく、信頼という優しくて暖かい風が入ってくるかもしれません。

周りの人からは親近感を持たれ、かえって信頼関係が深まることさえあるのです。

まずは、ご自身に問いかけてみてください。
「私が今戦っているのは、目の前の現実? それとも壁の中の妄想?」

もう、一人で戦わなくて大丈夫です。
自分で作ったその分厚い壁を、少しだけ崩してみませんか?

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